英語ではゴ−ルデン・シャワ−。確かにそう。中部タイ平野の4月。めらめらと燃え立ちそうな大地の熱気に追われて一斉に花を咲かせた姿は「黄金色の驟雨」だ。そんな姿をチャイナ−ト県のチャオプラヤ−・ダム上で見たことがある。
 バンコクの民主記念塔前のレストランの窓から眺めたゴ−ルデン・シャワ−も忘れられない。都会育ちのせいか、薄緑の葉まじりで薄黄色にけぶっていた姿。「金の時雨」とでも言えようか。
 東北タイでは、この花をク−ンと呼んでいる。コンケン市では毎年ソンクラ−ンの頃にク−ンの花祭りを催す。4月のコンケンは大変な暑さであるけれど、この花は大地が熱ければ熱いほど、美しく咲くようである。気の遠くなるような暑さのなかを、冷房の効かない車で2号線をドライブして気がついたことだった。
 バンコクではラ−チャプルクという。サンスクリット語で「王の樹」というのは、タイに咲く幾多の黄色の花樹のなかでも、色あいが中国で王だけに許されたという黄色に最も近いからであろう。
 と言って、考えてしまう。ラ−チャプルクは湿地を嫌う。この花が王都バンコクに咲くまでには、どれほどの数の人々が東北高原から連れ来られ、この都の建設にあたったのであろう。

チャオプラヤ−・デルタの水はけがよくなるまでには、どれほどの人々が使役されたことであろう。ク−ンの花はラ−チャプルクになるまでには、相当の悲しみや苦しみ、恨みつらみを嘗めたろう。
「金色の冷雨」が降ったこともあったかも知れない。

 私の好きなのは、南タイはチャイヤのボロムタ−ト寺前のラ−チャプルク。

 9世紀からという仏塔を囲んだ門前に、露座の古仏を守って、優しく枝垂れている。

 三体の仏像はアユタヤ時代の作。完全なのは向かって左端の仏像だけなのだが、その赤砂岩の肌に濃黄色の花がよく似合う。この地方特有のねばり耳を持った古仏の柔らかい頬にさす黄色の花翳はさながら天が注ぐ「金色の慈雨」。いつまでも眺めていたい一幅の絵であった。
レヌカ−・M




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